バリューチェーンから見る広告代理店というビジネスモデルの考察

皆さん
お疲れ様です!

今日は広告代理店事業の存在価値というものをバリューチェーンを使って考察していきたいと思います。

バリューチェーンとは

企業が行うそれぞれの事業活動を一連の流れとして捉える「価値連鎖」の考え方を指します。

製造業なら、”購入”→”製造”→”出荷”→”販売”→”サービス”という原材料の購入からお客様に商品が届くまでの一連の流れをチェーンのよう(連鎖的)に図にしたものがよく見られます。

古くは、隣町の港から魚を仕入れ、自分の街に運び、人通りの多いところでお店を出店して料理をしてから売るという商売から魚だけを仕入れ料理店に売る卸売業者が生まれ、卸売業者から安く仕入れ冷凍食品に加工して消費者に売るなど、バリューチェーンの一部を担うような商売が数多く生まれました。

こういった現象をバリューチェーンの再構築と呼び、様々な産業が勃興しました。

製造業・建設業・漁業・サービス業など様々な業種でバリューチェーンは存在していますが、同業種では同じようなバリューチェーンになるのでしょうか?

答えは、同業種でもバリューチェーンの内容は様々です。一部を外注しているところもあれば、すべて内製化している会社もあります。

皆さんも知っていて、分かりやすい事例としてインテリア業界のIKEAとニトリで各パートのそれぞれの特徴を書いてみます。

IKEAとニトリ

・購入

IKEA:サプライヤーに生産を委託しており、各工場の生産計画から物流手配などは一括して本部が行っている

ニトリ:企画から資材調達、全て自社で行う自己完結型の生産体制

・製造

IKEA:「サプライヤーの能力を買う」という哲学があり、生産ノウハウを提供し、安価で高品質な原材料を入手できるように支援している

ニトリ:インドネシアとベトナムの自社生産工場の他、700箇所を超える協力工場で行っている

・出荷/物流

IKEA:IKEA 独自の梱包方法「フラットパック」による無駄の削減をしている

ニトリ:一般的には商社等と協業することが多い中、ニトリは中国とベトナムに海外物流センターを整備

・販売

IKEA:「キャッシュ・アンド・キャリー」という方式で、商品閲覧と購入を分けており、多くの顧客が商品を自宅に持ち帰り、組み立てまで行う

ニトリ:「お、ねだん以上。」を形にするため、商品開発に力を入れており90%がPBの開発輸入品。
顧客ニーズを想定したブランドを展開している

・サービス

IKEA:どの国でも同じ製品を展開し、各国のローカル色は最低限に抑えることを重視している

ニトリ:すべての店舗が“見やすく、買いやすい売り場”であることを重視しており、商品のレイアウト やディスプレイのルールは、ほとんどの店舗で統一されている

説明が長ったらしくなりましたが、IKEAはグローバルニーズを広く取るような事業戦略があり、その事業戦略に合わせた形でバリューチェーンが構築されている一方で、ニトリは国内ニーズをとるために国内固有のニーズを柔軟かつタイムリーに対応できるようにバリューチェーンが設計されています。

人材教育の戦略も違っており、ニトリでは各役割のスペシャリストを育成するのではなく、配転教育(クラスチェンジ)を積極的に行い、全社員を「ゼネラリストなスペシャリスト」として育成することにより、自社のバリューチェーン全体を有機的につなぎ、組織能力を高めている。(営業1年→マーケ2年→物流管理2年みたいなイメージです。)

職種が変わるとスキルセットは0からリセットされますし、営業から物流に変わる際に従業員が転職するリスクもあるでしょう。

しかし、そのデメリットを許容した方が事業戦略上プラスになると長期的な視点から意思決定しているのだと思います。

同じ業界でも会社としての方向性が違えば、バリューチェーンの内容は全く変わってくることがわかります。

広告代理店は、不要?必要?

一般論として、自社で完結した方がコストが抑えられれて良いだろうという説は、正しい一方ですべて内製化するということは中長期的な管理コストや教育コストも必要になります。またweb広告での広がりが見られないと働く人のやりがいが限定的で、代理店に転職するという方もおります。

マーケ人材がいない会社で広告運用を内製化するためには、マネジメントする人・広告運用する人・お金の出入りや契約やアカウント情報を管理する人、そしてやりがいや成長など個人が感じる感情に対して継続性を作る必要もあります。

EC化率が上がっている事やDX文脈の話が出てきている事からネット経由の売上比率が上がっており広告業界のインハウス化の流れは確実に起きており、インハウス化した方が良い判断になる会社も沢山あります。

大手の広告代理店の業績が落ちている背景には、ネット広告による売上比率が大きくなり自社でインハウス化した方が今後の人材育成や拡張性を考えたときにその判断が良い状態になっている企業が増えているからだと思います。

大手代理店は大きなクライアントが多いため、社内をITに強くする流れはより強くあると思います。

一方で広告予算が少額の企業や広告による売上インパクトが大きくない企業は、インハウス化するより外注して、バリューチェーン上の仕入れの部分にリソースを寄せることや営業や接客など広告とは別に予算を寄せる方が大事だと考えると思います。(店舗は場所ゲーであり接客が顧客接点の場なので、この2点が重視されがち)

このように今後も広告運用業務を外注した方が良い企業はどんな特徴があるのかを整理し、我々の代理店事業部をどこにポジショニングするのかを考え、介在価値や成長余地を見出すのがマネージャー以上の仕事になります。

300円の安い早いが価値の牛丼屋もあれば、5,000円を超える高い遅くても良いが価値の牛丼屋があるように、発注主(お金を払う人)は費用対効果・組織の方向性や人の性格によって、インハウス化を目指すことが必ずしも最適解ではない事がわかります。

レイヤーマスタとして最強の会社

バリューチェーンの一部を担い、そのレイヤーマスタとして大きくなった企業があります。

時価総額6,000億円の株式会社shiftです。shiftはソフトウェアの最後のテストを行う所に着目し、そのテストのみを自社で受託し、今の伸び続けています。

一般論ではなく、マクロ視点やミクロ視点と様々な視点から物事を見てみると新しい発見は沢山あります。また自分の考えとは反してなぜこの企業がこんなに大きいのか?と自分に対して批判的な思考(クリエイティカルシンキング)をしてみると、より理解が深まります。

市場は衰退しているのに、なぜこの企業が伸びているの?という事もあります。

外部環境の理解に加えて、自社の武器をどう作っていくかも重要です。動画事業があるので、動画制作を強みにもできますし、オンラインオフラインを跨いだ代理運用、状況に合わせて柔軟にポジションを作っていきましょう。

最後に

仕事をしていると、自分の仕事の意義ややりがいが分からなくなる時もありますが、視点や時間軸を広げると様々な情報を新たにインプットし、自分の現在地というのが分かり、何のための仕事なのか再認識できたりします。悩んで自分の中から何かを探そうとしても何も出てこない事が多いです。

私も仕事に悩み、外交的だと思っていたが実は内向的な性格だと知ったり、コーチングを受けてみたり、コインの表面しか見ておらず青い事を言って先輩から「実現性を考えていないただの綺麗事だね」と言われたり、寄り道を繰り返してきたので、仕事の悩み含めてそういったキャリア相談があれば気軽にご相談ください。

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